私達は脳で音を聴いている
普段は気に留めないことですが、振り返れば自分が興味を持つ音(例えば友人や家族の声など)を最優先に聞いていた経験は誰にもあるはずです。
私達は耳に届いた空気の振動から必要な情報をとりだしたり、記憶と関連づけたりしながら、脳がリアルタイムに情報処理を行って音波(鼓膜の振動)を再構成し、音として聞いています。つまり、私達の聴覚は測定器のようにすべての音を公平(フラット)にとらえているのではなく、耳は個性にあふれ、合理的で利己的な選り好みをしながら「聞く音」と「聞かない音」をハッキリと区別しているのです。
音楽を聴くときにも、この選り好みを体験できます。例えば、ギターの弾き語りを聴いているとき「ギター」の音だけを抽出して聞くことは、私達にはとても簡単です。しかし、相当高度な音響用コンピューターを使っても、リアルタイムに「ギター」の音だけを取り出すことは出来ないのです。これらの経験や働きはすべて「私達が脳で音を聴いている」証明なのです。
当然、百人いれば百の聴覚は一つとして同じ特性ではなく、また同一人物であっても時間と共に耳の特性は刻一刻と変化しているのを忘れないでください。自分に聞こえる「音」が、同じように人に聞こえているわけではありませんし、先程も述べたように、同じ音が思いこみによりまったく違う音に聞こえてしまうことすらあるのです。
オーディオの再生音の混濁感を改善し、分解能や空間の透明度、広がりなどを改善しようと試みるときには、この「選り好み」あるいは「抽出」という、人間の聴覚特有の働きを考慮することが大切です。混濁して聞こえるということは、裏を返せば特定の音だけを抽出しにくい状態なので、混濁感を減少させる(透明度を増す)ためには、音を分離して聞き取りにくい場面を考え、そうならないように音質を改善すればよいのです。
でたらめに高額なオーディオ・アクセサリーを試すのは、健康食品や化粧品を価格で選ぶのに似ています。無駄な試行錯誤を繰り返し時間と金銭を浪費する前に、「ギター」と「歌声」をいとも簡単に分離できる私達の優れた聴覚がどういう障害により、音を分離できなくなってしまうのか、その理由を見いだして的確な対処法を論理的(科学的)に解明すれば、より早く「良い音を聞きたい」というゴールにたどり着くことができるはずなのです。
ホールにあるオーディオ再生のヒント
人がたくさんいる「ホール」では、特定の人の話し声だけは、聞き取り辛いものです。ここに大きなヒントがあります。「類似する音は分離して聞き取ることが難しい」という点と「響き(残響)が多い環境では音を分離しづらい」という2点です。
しかし、同様に残響の多いコンサートホールでも、腕のいい交響楽団の音は透明に分離して聞こえています。
それは高度な技術を駆使して「作りだされた結果」であって、誰でもがそのように演奏出来るわけではありませんが、この「実演」とオーディオによる「再演」には、音響的に非常に密接した関係があり、その関係を解明できれば自室をコンサートホール並みの高音質空間に変えることが可能となるのです。
透明なエコーと、濁ったエコーの違い
では、最初に「透明に分離したエコー」とは一体どういうものなのか考えてみましょう。オーケストラの生演奏を聴いているとき、たくさんのバイオリンの音の中から特定の奏者の音だけを聞き分けることはとても難しいことです。しかし、同じオーケストラでも異種の楽器の音や、トライアングルの音なら沢山の音の中からその音だけを分離抽出して、ハッキリと聞き分けることができます。異質の音は分離して聞きとれるのです。
つまり、「同種・同質の音」の重なりは分離しづらく、エコーを濁らせる原因となりますが、「異種の音」なら重なっても濁りの原因とはならないのです。では、私達は一体どのような音を「同質」だと感じ、どのような場合に「異質」だと感じているのでしょう。
「有毛細胞」による刺激の受け方を、皮膚感覚に置き換えてみましょう。腕の表皮に2本の指を1p程度離して軽く叩いても1本の指の刺激とは区別できません。つまり、隣り合うように近接している「有毛細胞」が同じように刺激されても、その刺激を別々なものとは感じ取れないのです。すなわち、周波数が非常に近い音を分離して聴くことは出来ないということです。
しかし、指の間隔を20p程度離して同じ刺激を与えれば、明らかに別々な刺激として感じられることから、二つの音波の周波数が離れていれば、私達はそれを「別なもの」と感じ取ることができることがわかります。
また、指の間隔が非常に近くても叩くタイミングが違えば(刺激に時間差があれば)「二つの刺激」として感じられることから、聴覚が音を分析するときには、時間と周波数スペクトラムの関係が重要であることがわかります。
人間が音をとらえるメカニズムを少し分析してみましょう。私達の耳には「有毛細胞」と呼ばれる毛の生えた組織があり、鼓膜を振動させた音波は「特定の有毛細胞の毛」を共鳴させるように振動させます。つまり、私達の耳は「色々な周波数に対応した音叉の集合体」のようなものなのです。
たくさんの音が耳に入ったとき、音は瞬時に周波数別の振動エネルギーの分布に分解され、この周波数別の振動エネルギーの「分布の状態(パターン)」が類似している音を、私達は「音色がにている」と感じ、そうでないなら「異質な音」と感じているのです。
つまり、音が耳に入った時、周波数スペクトラムが近い音波は分離しづらく、逆に、周波数スペクトラムが異なっていれば同時に耳に入っても分離できるのです。この音波に固有の周波数スペクトラムが「音のパターン」として記憶されるのです。この「記憶された音のパターン」の違いに注目しながら聴覚は、連続して音を分析しています。これが、「音を聞いている」という状態なのです。
ですから、同じ声でも「周波数スペクトラム」の異なる「男性」・「女性」・「子供」の声は難なく区別できるのです。
声に関わらず楽器でも、指揮者のすぐ側にいるバイオリニスト(コンサートマスター)の「バイオリンの音」が背後の大勢のバイオリニストの音に混ざらず聞きとれるのも、同じように「周波数スペクトラムの構造(倍音構造)」が異なるように演奏されているからなのです。
ゴースト歪みの発生を抑える
いよいよ本題のオーディオの音質改善に話を進めましょう。響きを分離しづらくする原因は、同種の音(近似する周波数スペクトラム)を持つ音だということが分かりました。異種の音、つまり再生音と無関係に発生している「ノイズ」は音を濁らせないのです。その良い例が「古いCDなどに録音されているテープのヒスノイズ」です。このサー音やシャー音は、私達が音楽を聴くときの大きな妨げにはなりません。
しかし、機器内部やリスニングルームで音が反射して生じる音波は、私達の耳に届く再生音波のコピーなのですから、当然、再生された音と非常に近似する音響パターン(周波数スペクトラム)を持っています。しかも、反射により信号は遅延しているわけですから、ホールで大勢の人が一斉にしゃべるような感じで再生音をマスキングし、エコーを濁らせ、音を悪くする大きな原因となっているのです。
この?
??????????再生音が遅延して生じるエコーによる音質劣化を「ゴースト歪み」と名付けましょう。この「ゴースト歪み」は、先ほどのヒスノイズが大きな音量でも音楽をそれほど損ねないのに対して、聞き取れないほどの小さな音量でさえ音質を大きく損ねてしまいます。しかし、オーディオ機器の内部やリスニングルームでは、測定器では測れないほどの微少レベルの「ゴースト歪み」が様々な原因で発生しているのです。
音を濁らす原因と理由は、ほぼ解明できました。次にオーディオ機器から音の出るプロセスを振り返りながら、「ゴースト歪み」を低減し、音を良くするための方法を考えてみましょう。
→歪み→
ゴースト歪みを低減するための筐体の設計
「ゴースト歪み」は、フィードバック回路などの「電気的な信号の遅延」からだけではなく、オーディオ機器のあらゆる物理的な接触点での「物理的な信号の反射、遅延」によっても発生しています。例えば、アンプを支える脚、筐体に部品を固定しているネジなどの金属接触部分では、「音響振動の遅延」や「共振」、「接触面の鳴き」による「ゴースト歪み」が発生しています。
この歪みの発生原因は「接触面での振動による音の反射」が主因であると考えられるので、接触面の「振動」を何らかの方法で抑制することができれば、音質の透明度は大きく向上するはずです。
しかし、振動を抑制するといっても「振動面に柔らかい材質」のゴムなどを使えば、「物理的な振動発生の基点となる物理的なアース(振動の節)」がグニャグニャと不安定になるため、「音の芯」がなくなったり、もやもやとぼけた音になってしまうでしょう。
この「LA MusE」は、ベースオイルのスクアランが「音響ダンパー」として働き不要なノイズだけを効果的に抑制し、地上で最も硬いピュアダイヤの粒子が接触面の隙間を埋めて振動を抑制し、さらにカーボンコーティングダイヤモンドの働きで電気的な導通も改善出来るという、非常に合理的ですぐれた液状音質改善アクセサリーなのです。
2001年にブラックメタル製の「ワッシャー(φ3mm/4mm)」が発売されました。これはネジをブラックメタル製に取り替えるよりも安価にすみ、また特殊な長さや形状のネジに対しても、ネジ穴の大きささえ合えば使えるなど汎用性が高くなっています。効果はネジを取り替える場合よりは、若干低く感じますが、このワッシャーを使って「制振対策」をおこなうことで、音のにじみや濁りを大幅に軽減することができます。
しかし、このワッシャーも使いすぎると機器内部での「エコーの発生」が完全におさえられ、再生される音楽が無響室でスピーカーを聞くようなモコモコと生気のない音になってしまいますので、くれぐれも度を超さないように加減に注意してください。
そこでTERAやLUNAでは、最も振動を受けやすい出力ICの固定に、金属の強度とゴムのような振動抑制力を併せ持つ「ブラックメタル」という素材を使用しています。ブラックメタルを使えば、「物理的なアース」の安定度を低下させることなく、「濁り」だけを消去することが可能なのです。
また、ブラックメタルを使用できない箇所には、AIRBOWとクリプトンの共同開発により生み出された、「LA MusE」(ラ・ミューズ)を使用しています。「LA MusE」は、すでに発売されているカーボンダイヤトニックと同種の製品ですが、ダイヤをコーティングしているカーボンの柔らかさが響きを消しすぎることに注目し、「大量のピュアダイヤモンド」をカーボンダイヤトニックに混入することで、接触部分の隙間をダイヤで固定し「物理的アース」の安定度を確保するように配慮されています。
クリプトン社
ブラックメタル
KA2503
\21,000/8個
制振ネジ
φ3o・φ4o
ワッシャー
φ3o・φ4o
響きを消すだけでは、音は良くならない
筐体や回路での「鳴き」の発生をおさえるために、ネジやワッシャーを取り替えるためには、オーディオ機器をばらさなければならず、専門的な知識が必要とされます。しかし、筐体の「響き」は「脚」を介して大地に「物理的にアース」されていることを忘れてはいけません。
つまり、「脚」の材質と取り付け位置は、筐体の「響き(鳴き)」に大きく影響しているのです。いわば車のサスペンションに相当しますから、この「脚」をチューニングすることは「ゴースト歪み」を低減し、音質を向上させるための良い手段なのです。では、どのような「脚」が「ゴースト歪み低減」に有効なのかを考えましょう。
結論から先に述べるなら、インシュレーターに求められるのは「振動を抑制する能力」ではなく「響きを調和させる能力」なのです。響きを抑制するためだけなら、ブチルゴムやソルボセインなどの響きを完全に吸収するゴム系のインシュレーターが最適だということになりますが、振動を殺すだけでは音の生気が殺がれ鬱々としたおもしろみのない音になるというのは前述したとおりです。
また、このような柔らかいインシュレーターは、音の輪郭成分である「パルス性」のエネルギーの「角を丸く」してしまうので、明瞭度が低下して音がもやもやしたり、一聴すれば濁りが取れたように感じられても、濁りと共に「空気感」や「音楽の気配感」なども一緒に消されてしまうことが多いのです。 結果として、音楽をつまらなくしてしまうことがあり、そのような考えで作られているアクセサリーは選ばない方が無難です。また、これらの製品を試聴する際には「音の細やかさや、気配が失われていないか?」に十分注意してください。
インシュレーターの選び方
柔らかい材質のインシュレーターやボードの音が良くないという説明をしましたが、ではどのような特性を持つ製品がインシュレーターやボードに適しているのでしょう。
- 筐体をブレさせずに強固に固定できる「強度」
- 伝わる振動を嫌な形で反射させない「響きの良さ」
- 筐体全体の響きを整える「響きの調和」
第1番目の条件の「強度」を満たしているかどうかは、インシュレーターやオーディオ・ボードを拳などで叩いてみればすぐにわかるでしょう。鈍い音が返ってくるような響き方をする製品は強度が不足しています。
しまうのです。T社のラックやオーディオ・ボードがこの良くない代表にあげられますが、それなのに薦める店や雑誌が多いのはどういうことなのでしょう?
2番目の「響きの良さ」も簡単にチェックできます。ボードを叩いたり、インシュレーター同士を軽くぶつけて響かせたときに「感じられる? ??????????響き」がその製品の固有の音なのです。楽器に使われるような、「響きの良い木」や「響きの良い金属(真鍮)」などは多少その材質が「鳴く」ことがあっても「心地よい響き」なので、再生音に不愉快な響きを生じさせません。ただし、これも程度問題で「強度」や「形状」が適切でないと、響きが強くなりすぎ、再生音に「ボードの固有音」という癖をつけてしまうので注意してください。
3番目の「響きの調和」の説明は少し難しいのですが、すべての物質は「整然とした結晶構造」を持たない限り必ず「材料の中に何らかの不均一性」があり、その密度や構造の境界面(変わり目)で「音を反射したり歪ませたりする」ことがあるのです。合金や合成樹脂などの人工材料にも、「木目のようなもの」があるとお考えいただければわかりやすいかも知れません。
市販のオーディオラックの「棚板の音質チェック」にもこの方法は使えます。ボードを叩いたときに、ボーンと響くような製品やパンという高周波の音が反射して聞こえるような製品は選ぶと後悔するはずです。ゴンッという詰まった重めの音がするのが、基本的に選んで失敗の少ない製品です。低密度のパーチクルボード(集成材)を使ったボードはあまりよくありません。音がスカスカになってしまいます。
一番良くないのは、振動吸収力の弱い「密度の低い材質」の上に「密度が高く薄い材質」を貼り付けている「オーディオ・ボード」や「棚板」です。それは、あたかも「太鼓」の上にオーディオ機器をのせるようなもので、表面の材質の響きがそのまま再生音に盛大に反映されて楽器が木目の方向を揃えないと良い音が出ないように、インシュレーターもその材質の「方向性」を揃えてやらないと、「空間の広がり」や「音の自然さ」に支障をきたす場合があるのです。
もし、素材自体が「ダイヤモンド」のように、整然とした「結晶構造」を持っているなら、この「結晶の向き」に沿って振動が流れるように配置すれば、理想的なインシュレーターになるはずです。
もちろん、この(1),(2),(3)の条件を満たせば「絶対によい製品」であるという保証はできませんが、逆にそのどれかの条件でも欠けているなら、どんなに立派な解説がついていても、その製品が「最良の製品である」という可能性は低いでしょう。
35*45*0.8 \2,200
35*45*1.6 \3,500
44*49*0.8 \3,000
44*49*1.6 \4,500
お薦めのインシュレーター
硬くて響きの発生が少ない理想的な材質は「ブラックメタル」でした。ブラックメタルを素材に使用した様々な「制振グッズ」が発売されていますが、いずれも効果が確実で人気も高いようです。しかし、このブラックメタルでは「響きの調和」という部分に若干の問題が残ります。(もしブラックメタルのインシュレーターの表面にマークをつけて方向がわかるようにして、インシュレーターの方向を90度程度回転させれば、音の広がり方などが変わることがわかるかも知れません)
そこで、「響きの調和」を重視している製品として注目しているのが、「ローゼンクランツ」のインシュレーターです。この製品は、強度が十分にあり響きも美しい「真鍮」を母体とし、真鍮と真鍮の間に「極薄いハンダの層」を設け、その厚さを1/100mmの精度でチューニングすることで、「振動吸収量」が調整されています。さらに 「ローゼンクランツ」製品は「素材の響きの方向と響きの中心」を一致させることで素材固有の鳴きを大幅に低減させる工夫まで怠っていません。これで(1)と(2)の条件は満たしました。
次に「響きの調和」という命題に対して、ローゼンクランツ製品は、金属の水平垂直の響きの方向を管理するという方法でこれをクリアーしています。これらすべての条件を、高次元で満たしたローゼンクランツのインシュレーターの音質が、同種の製品の中でも飛び抜けて優秀なのはそのためです。
また、AIRBOW製品の中で、その動作が最も楽器に近い波動ツィーターの「脚」は、他の製品よりも音質に遙かに大きな影響を与えるため、このローゼンクランツのインシュレーターを採用しています。
廉価でも高音質を楽しみたいという、ユーザーの要望に応えてCLT-2の脚と同時に開発(同時開発により開発費のコストが低減できます)されたのが、「ローゼンンクランツPB-BABY」です。その形状は「音の響きを調和させる」ため、素材の中での音の広がりを十分に配慮した上で、入念な試聴により決定されました。もちろん、形状だけではなく真鍮の水平及び垂直方向の響きも完全に管理されて生産されるため、見かけは厚みのあるただの真鍮のコインのような感じですが、その音質は同価格の他メーカーのインシュレーターとは比べものにならないほど優れているのです。
しかし、厳しい管理工程のすべてが、文字通り人間の手によって行われるローゼンクランツのインシュレーターの工法では、BABYよりさらに廉価な製品を作ることが困難なため、さらに廉価な製品として「木材」を材料にしたインシュレーターの企画をローゼンクランツに依頼したところ、「天然木を材料にしたインシュレーターは考えていない」ということでした。
そこで「ローゼンクランツから学んだ、響きが調和する最適な形状を持つ木製のインシュレーターをAIRBOWブランドで製作しても良いか?」と尋ねたところ貝崎さんの快諾が得られたので、「ローゼンクランツの類似形状を持つ黒檀削りだし」のインシュレーターをAIRBOW製品として2001年6月に発売しました。(WOOD-BOY \2,000/1個)
この製品は、超高性能を出来るだけ安く提供するため凝った作りの合成材料ではなく「資質の良い天然素材」を材料にし、様々な素材をテストした結果、強度が高く嫌な響きを出さない「良質な黒檀」を選び出しました。ただし、天然黒檀とはいっても、この製品に使用しているのは、伐採後5年以上乾燥させた非常に良質な黒檀です。
そして、「響きの調和」を計るために何種類かの形状をテストしましたが、結局木製でもローゼンクランツ製品と同じような形状(ローゼンクランツ承認済み・無断コピーではありません)がベストでした。結果としてインシュレーターにより響きの調和を計ろうとするなら、形状は材質に関係なく「ローゼンクランツ型」に行き着くということを再確認することにもなりました。
さすがにこの価格では、方向性までチューニングできませんでしたが、「かすかに見える木目」の方向を揃えることで、この問題に対処することができます。(この素材の方向性による音質の変化は、金属よりも素材の不均一性が高い「木材」を使用しているため、比較的大きくあらわれます)
天然素材の長所を生かし、数多くの試作より形状の最適化が図られたこのインシュレーターは、音質改善効果が大きく、また設置位置などによる音質の差が少ないので使いやすいという特徴を持っています。ねらい通り、入門者をはじめ、多くのユーザーに自信を持ってお勧めできる「逸品」に仕上がりました。
WOOD-BOY黒檀
\2,000/1個
WOOD-BOY紫檀
\2,000/1個
透明度の高い音が特徴。
\85,000(4pieces)
\65,000(3pieces)
BIG-JAZZ
\30,000(1piece)
DADDY-JAZZ
\22,000(1piece)
アフリカ黒檀ブロック
手軽で良い音
QB3(34o角) \2,000(4pieces)
QB5(43o角) \4,000(4pieces)
スパイク受けにベストです
BABY-ECO
\2,200(1piece)
BABY-BR
\2,000(1piece)
インシュレーターの設置方向
さて、最適なオーディオ・ボードとインシュレーターの選び方はわかりました。では、効果的なインシュレーターの設置方法を考えましょう。
図のように、響きは一点から自然に広がるように入るのが理想です。このような振動の伝播では、頂点から入った「響き」が反射して戻るときにも「頂点」から戻る(中央図)ため、「響きに濁り」が生じにくいのです。しかし、これを逆にすると右図のように響きが入った所にきちんと戻らないことが原因となり、音を濁らせる場合があります。
しかし、このモデルはあくまでも理想です。「重量のある筐体」や「木製の筐体(スピーカーなど)」では、接触面積の小ささが災いし、強度的な問題で左図のような形に、インシュレーターを設置することができない場合があります。また、円筒状や立方、直方体などのインシュレーターにはとがった部分がなく、右図のように、「平面同士」を接触させ、筐体を支えなくてはなりません。そんな時には、右図の円錐の底面に相当する「インシュレーターと筐体の接触面」に「がたつき」が生じないように、できるだけ密着するよう注意しながら設置してください。がたつきがあると、その部分で音が反射したり、歪んだりして音を濁らせる原因となってしまうのです。
3点支持がおすすめ
よくインシュレーターを3点で使用すればよいのか、あるいは4点がよいのかという相談を受けることがあります。結論は、ほぼどのような場合でも3点が有利です。なぜなら、3点支持では、3つのインシュレーターへ均一に荷重が分配されるので機器の重心が移動せず響きが安定するからなのです。
4点支持では筐体が振動することで、各々のインシュレーターへの荷重が変化し、機器の重心位置が定まらず不?
??????????安定になってしまいます。そのため、響きの中心位置と重心位置の関係が安定せず、機器の響きの調和に悪影響を及ぼして音を濁らせる原因となるのです。どうしても置けない場合を除いて、インシュレーターは、3点支持がお薦めです。
しかし、インシュレーターを3点にする場合には、3角の頂点の方向をどのようにするか決めなくてはいけません。
響きの中心位置(振動モーメントの中心)とインシュレーターの位置関係は、音響エネルギーの生成方向に非常に大きな影響を与えています。音響エネルギーは中心位置からインシュレーターの方向へ向かって「抜けるように進んでゆく」とお考えください。これが、頂点の方向を決めるときのヒントになります。
例えば、スピーカーを3点支持する場合のインシュレーターの設置位置と、音の広がり方向の関係について説明しましょう。まず三角形の頂点がリスナー側(インシュレーターは前一点、後ろ二点)に向いている場合には、音場はリスナーを頂点とする二等辺三角形(正三角形)の形に展開されます。ボーカルや楽器の位置を前に出したい場合には、このような設置方法がお薦めです。
逆にインシュレーターを前二点、後ろ一点に使用した場合は、リスナーを底辺にするように逆三角形を描くように音場が広がります。スピーカーの後ろに音場を展開し、奥行き感を出したい時には、こちらの設置法がお薦めです。このインシュレーターの設置位置と重心位置との関係は、アンプやCDプレーヤーにもある程度適用が可能です。
上側がリスナーだとすると、左の置き方で音は前方に、右の置き方では音は左右に広がります。
最適なインシュレーターの設置位置
シンバルを叩くときに中央付近を叩く場合と、外周付近を叩く場合では、音質がまったく異なります。同じことが、オーディオ機器の筐体を支えるインシュレーターの設置位置にも当てはまります。つまり、インシュレーターを底板のどこに設置するか?その置き方次第でその機器の音質は驚くほど変わってしまうということです。
ギターやバイオリンの弦が振動する様子はご存じだと思います。全体が一度に前後に動くのではなくて、両端あるいは全体の長さが割り切れる位置は静止しており、その場所を振動の基点として弦は振動しています。弦のように細長いものではなく、シンバルや筐体の底板のような平板が振動するときにも、弦の振動と同じように、「振動する場所」と「振動しない場所」にわかれています。この時、静止した振動の基点となる場所が振動の「節」と呼ばれています。
「節」は振動の基点なのでそこを打撃した場合、与えられた振動(運動)エネルギーは、「最大の効率で一瞬にして振動体全体」に広がります。すなわち「節」を振動させるためには「振動体全体が前後に振動するほどの大きなエネルギー」を加えないといけないということなのです。つまり、この一番動きにくいポイント(一瞬の打撃で素材すべてを動かすのは難しい)である「節」に打撃を与えた場合は、最短の時間で打撃エネルギーが分散するため、素材自体の音はあまり響かずコツンと堅い音がして響きも短時間で消えてしまいます。
この「節」に正確にインシュレーターを設置すれば、筐体の減衰力が最大限に発揮されると共に、振動エネルギーの偏りから生じる「不快な共振」の発生が最小限におさえられ、機器の響きが綺麗に透き通り、明瞭度や音の広がりが大きく改善されるのです。インシュレーターは、この「節」に設置しないと音質向上効果が望めないばかりか、逆に音を悪くしてしまうことがあります。オーディオ機器の脚が取り付けられている底板や、スピーカーの底板、筐体を構成するパネルなど、あらゆる素材に振動の「節」が複数存在しますが、この「節」を見つけるのは比較的容易です。素材に打撃を与えて一番響きの堅い位置(一番響かない位置)を探せばよいのです。拳や鉛筆などの先の尖ったもので底板をコツコツと叩きながら、響きが最も早く収束する位置(一番詰まった音のする所)が見つかったら、そこが「振動の節」なのです。
「節」と「節」の間には、素材が最も大きな振幅を繰り返す場所があります。これを「振動の腹」と呼んでいます。こういう位置に脚や回路を支える柱を取り付けると音を濁らせるので、極力避けなければいけません。逆に、レゾナンスチップなどの「振動を抑制するアクセサリー」なら、この「腹」に設置するのがベストです。
筐体の振動の「節」が、良質なインシュレーターで固定されれば「音の芯」と「残響成分」が綺麗に分離し、音楽は澄みきった広がりを持って非常に繊細に聞こえるようになるのです。