AIRBOW コンデンサーヘッドホン
比較試聴リポート
STAXの最高モデルSR−007と少し前の真空管式ヘッドホンアンプSRM−T1Wの2機種と新発売のAIRBOWコンデンサーヘッドホンの音質比較を行いました。
使用機器
CDプレーヤー | AIRBOW CH5000R Super | ヘッドホン | STAX SR−007(オメガ2) | AIRBOW SC−1 | ヘッドホンアンプ | STAX SRM−T1W | AIRBOW SRM−222 / SRM−222P |
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演奏曲目・バイオリンソロ
演奏者 Hilary Hahn 演奏曲 Bach Partita No.3 |
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SR−007 | SC−1 | |
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SRM−T1W | 評価:7生に較べて、明らかに情報量が不足している=音の細やかさが足りない。 低音が出ないため、シンフォニーという雰囲気に乏しく、生と較べて明かな違和感がある。 |
評価:8音楽の緊張感がやや殺がれる。 T1Wの良くも悪くも真空管的な音作りが音楽を支配する。 007では聞こえなかったホールトンガ聞こえる。 透明度はSC−1が高いが、音の細かさやディティールは007が勝る。 |
SRM−222 | 評価:8音の立ち上がりがクッキリし、音がクリアになる。弓と弦の擦れる音や、弓使いの強弱がよりハッキリする。 躍動感がある。 T1Wに較べると音が鋭い。 |
評価:8222Pより色っぽいが、やや表現が荒削りに聞こえるためか、奏者の年齢がやや若く感じられる。でも、これで十分と感じられる音質。生のバイオリンの音色に近いイメージ。 |
SRM−222P | 評価:9T1Wや222に比べ、明らかに音が広がり音場感(ホール感)が出る。ヘッドホンの外側にコンサート会場があるように感じられる。 このアンプだけが、バイオリンの直接音とホールトーン(残響音)を明確に分離して再生する。 |
評価:12緻密で繊細。透明度が抜群に高い=ケーブルなどに起因する色づけがまったく感じられない。立ち上がりが、生のように鋭い。 ヘッドホンを全く意識することなく、心がすっと演奏に入ってゆく。 生演奏とほぼ同一=良質の完全なモニターサウンドが耳に心地よい。 |
演奏曲目・シンフォニー
演奏者 ミュンヘンフィル 指揮者 チェリビダッケ 演奏曲 シェーラザード |
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SR−007 | SC−1 | SRM−T1W | 評価:7生に較べて、明らかに情報量が不足している=音の細やかさが足りない。 低音が出ないため、シンフォニーという雰囲気に乏しく、生と較べて明かな違和感がある。 |
評価:7音のエッジが甘く、空間が混濁している。 雰囲気はよいが、細部が見えない。 弦は、やや艶があり美音だが芯がなく、明らかに生とは違う。 |
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SRM−222 | 評価:6だらだらしてきこえる。 緊張感がなく、オケが疲れているように感じる。 大きな違和感がある。 これは、チェリの指揮ではない。 |
評価:12音の混濁感が消え、空間が整理されさっぱりとするが、余計なエコーが消えるため、見かけ上の情報量がやや減る感じがする。 しかし、細部はスッキリ、クッキリと良く見渡せるようになる。 雰囲気は静かで深く、生っぽい。 ヘッドホンで聴いているという違和感は、ほとんどなくなる。 |
SRM−222P | 評価:6ぼやけて濁っている。 う〜ん、なんでSC1とこんなに違うんだろう? ホールトーンが混濁してしまってホールの音が聞き取れない。 大きな違和感があり、聞き続けていられない。 |
評価:15ワンダフル! 全てが目の前で起きているように、何もかもがクリアーに見渡せる。 目を閉じると本当にホールにいるようだ。 ヘッドホンの存在は、全く意識の中にない。心地良い。 これでこそチェリのオケ! |
演奏曲目・J−POP
演奏者 槇原 敬之 アルバム HOME SWEET HOME 演奏曲 5曲目 |
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SR−007 | SC−1 | |
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SRM−T1W | 評価:7ピアノの音に芯がない。 ボーカルのエコーが過多。 優しいが、表情がやや平坦。 ピアノの左手の音が丸く、緩い。 |
評価:11ヘッドホンと良く音が合っている。 優しい感じで表情もあるが、でも何か足りない。 左手の音が膨らむのが欠点。 タンノイのような音。 |
SRM−222 | 評価:9ピアノの音に芯が出る。クリアー。 子音がしっかり出るが、ややざらついている。 低音がしっかりしている。 |
評価:10007に比べて子音のざらつきが軽減され聞きやすくなる。 低音が非常にクリアーで、ピアノの音が生々しい。 |
SRM−222P | 評価:10クリアー。 ピアノの左手にしっかりとした芯がある。 ボーカルの表情がいききと、非常にリアルになる。 演奏に聴き入る自分を感じる。 |
評価:15この組合せがやはり、もっともクリアー。 感涙が出そうになるほど、心に演奏が深く入り、ボーカルが頭の中に直接メッセージをたたき込むように感じられるほど、奏者との一体感が感じられる。 録音とか、そういう余計なことが全く意識に入らない。 ああ、音楽ってこんなに美しかったんだ! |
総評
SRM−T1W
やはり真空管を使っていることが良くも悪くもこのアンプの性格を決めている。
良く言えば「艶っぽく」、悪く言えば「ルーズ(音がゆるい)」。
低音は、やや膨らむ傾向にある。
ある意味では「タンノイ」のように耳あたりがよく、長時間聴いても疲れず、ソフトの粗をださないが、真空管の着色が耳に付くようになると、その音に飽きるかも知れない。もちろんそれは、単なる好き嫌いと言えばそれまでですが。
SRM−222
生音を基準として音を判断する私には、やはりトランジスター特有の「ソリッドな切れ込み(鋭い立ち上がり)」と「濁りの少なさ」・「低音のしっかりした感じ」が好みだ。
ただし、標準の電源(ACアダプター)のままだとT1Wに較べ、やや音が粗い傾向があり、ソフトによっては子音が少し耳障りに感じられる時がある。
そういう意味では、T1Wに較べて演奏するソフトを選ぶと言える。
ただし、価格差やサイズに小ささを考えると、非常に優れた製品だと思う。
SRM−222P
SRM−222ではやや気になった子音のきつさや、音の粗い感じがなくなり、ヘッドホンの存在が完全に消えてしまうほど「音が緻密で滑らか」になる。
低音〜高音までの「エネルギーバランスが適切」で様々な楽器の倍音構造が完全に分離して、全く違和感なく聞き取れる。
倍音構造が明瞭でゆるぎないため、直接音と間接音の分離にも優れている。
あらゆる音の成分が圧倒的に生音に近く、「ヘッドホンの外側の音をヘッドホン越しに聞いているよう」な感じがする。
ヘッドホンとは到底信じられないほど豊かな低音が「リジッド感」・「スピード感」抜群に再現されるため、空間の広さと場の気配がきちんと感じられる。これは従来のヘッドホンではなかったことだ。サーロジックのサブ・ウーファーを完璧に使いこなせたときの音場の再現性がヘッドホンで実現するのは驚きを通り越して、驚異以外の何物でもない。
あらゆるソース、あらゆる音楽にマッチする。
ただ、なにも足さず、何も引かない、忠実なまでに生に近いその音は、全くオーディオ的でないから、オーディオマニアには多少素っ気なく、物足りなく感じられるかも知れない。
だからこそ「音」ではなく「音楽」に心が「すぅっと」入っていくのだ。「音楽を聴く」その言葉の意味を知る人に、あるいは「音楽を聴きたい」とお考えの方に是非一度は聴いて頂きたいと思う。
できれば、CDプレーヤーにはAIRBOW製品を使って欲しい。その真価が、存分に発揮されるはずだから。
SRM−007(オメガ2)
STAXの最高峰ということで、一番「薄い膜」をつかっているため「ラムダ以下の下級モデルにありがちなコンデンサー臭い歪み」が全く感じられない、とても良くできた素晴らしいヘッドホンだ。
ではなぜ、このモデルをベースにしなかったのかというと、逆に「膜の薄さ」が仇となって、振動板(振動膜)の強度が下がり空気を強く圧縮できず、生音に較べて高音の芯が緩くなっている(音の立ち上がりが丸い)と感じるからだ。
ただし、広がり感、繊細感、音色の良さ、色づけの少なさは現在発売されているヘッドホンの中でもちろんダントツの製品であることには間違いがない。
SRM−SC1
SRM−007の発売で「振動膜の固有音の低減」が自然な音を作りだすことは理解できた。しかし、逆に「振動膜の厚み」が音の芯をしっかりさせるために重要だということも再認識できた。
そこで「膜の厚みを薄くせずに固有音のみを消す方法」として「DCT処理(極低温処理)」を思いついた。繊細なコンデンサーヘッドホンへのDCT処理の実施についてSTAXからも大きな協力を得て、実験と開発を開始した。
結果、可能な限り広範囲に渡ってDCT処理を施すことで、STAXヘッドホンの振動板から「膜の固有音(高域のパリパリした感じや圧迫感を含む)」がほぼ完全に消え、中高域の繊細さも大きく向上した。
SRM−007を除く2種の膜厚をテストしたが、SR−404Signatureに採用されている振動膜をDCT処理した音質が素晴らしく、「膜の強度を低下させず固有音のみを消し去る事に成功」した結果、上位機種のオメガの弱点と感じていた「低域の薄さ=エネルギーの高音への偏り」が完全に払拭され「完全なるバランスを獲得したコンデンサーヘッドホン」が誕生した。
スピーカーでなくても「全く何の不満もなく音楽を楽しむことができる唯一の製品」。これこそが「真のイヤースピーカー」だと断言しても差し支えない。
とにかく、一度は聴いて欲しい。スピーカーを超える音質かも?知れないのだから。
終わりにかえて
スピーカーでは音楽を聴けないと言うお客様からは、「とにかく良いヘッドホンを作って欲しい」という声が絶えず、また個人的にも最小のスペースで音楽を楽しめる「ヘッドホン」という製品を完全なものにしたいという気持ちは非常に強かった。
長年おつき合いのあり、「ヘッドホンだけが音楽を楽しめる唯一の環境」というお客様にこの完成したシステムを真っ先に聞いて頂きたくて、試聴と評価をお願いすると快諾が得られたので、その感想をご紹介させて頂きます。
清原社長殿
昨日は、ありがとうございました。
音を聴かせて頂いて、「一ヶ月、のんびり待っていよう。」と思っていたのが、待ちきれないような気分になってしまいました。
音作りの話をお伺いしながら、光悦カートリッジの亡くなられた菅野さんが、「(殆どのメーカーが)オーディオを機械だと思ってるから、いい音が鳴らない。楽器を作ってると考えなければ、いい物が作れない。」と言われていたのを思い出しました。
特別な音の鳴り方はしてないのに、音楽がすっと入って来る。
菅野さんのお宅で音楽を聴かせて頂いた時の感覚が思い出されました。
重ね合わせてしまい、失礼でしたら申し訳ありません。
首を長くして、完成を楽しみにお待ちしております。
御試聴後、SRM−T1WとSR−007からSRM−222PとSR−SC1への下取り交換をご用命頂きました。