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心ゆくまで音楽(映像)をお楽しみ頂くための詳しいセッティング方法について

実際のコンサートホールの音響特性

1968年に発売された、BOSEの901というスピーカーをご存知ですか?「前面に1つ背面に8つのスピーカーユニットを配置するという独特の構造で、オーディオ業界で最も注目すべき発明といわれ世界中の専門家、特に音楽家から高い評価を得た」とされている製品です。


BOSE 901WB(現在のモデル)
構成

スピーカー本体×2本
専用イコライザー×1台

価格 \440,000-(1SET)

発売当時のモデル内部写真

このスピーカーには、11.5pのフルレンジユニットが「前向きに1個」・「後ろ向きに8個」ついていますが、それは「BOSE博士が、カーネギーホールの最も良いとされる席で直接音と間接音の比率を調べた所1:8であった」ことに由来しています。つまり、楽器からの「直接音が1」に対して「ホールからの反射音は8」もあったというのです。事の真偽は、明かではありませんが「BOSE901」というスピーカーの音場の展開やライブ感に独特の魅力があるのは事実です。

コンサートホールの音響特性理論をリスニングルームに当てはめる

今なぜこんな話題を持ち出したかというと、「リスニングルーム」においても、この「BOSE博士の理論」が重要なポイントとなっていることに確信を得たからなのです。
実際のコンサートを思い出してください。クラシックはもちろん、JAZZやROCKのコンサートでも「音に囲まれる感じのない後方や両端の席」では、思う存分コンサートを楽しむことが出来ません。当たり前ですが、それらの席のチケットは「音に囲まれ音楽を一番気持ちよく聴ける席のチケット」よりも「大幅に安い」のです。コンサートで臨場感を高めるためには、「リスナーを中心に前後左右から音が届く」ことがとても重要なのです。
コンサートホールの「残響音」が「演奏」に大きな影響を与えることは、一般に知られています。しかし、それを知っている人でも、オーディオ機器の音を聞くといえば、部屋の影響を全く考慮せず、「音質の変化はすべて直接機器に関わる問題だ」と考えているようです。しかし、実際にあなたが聞いているのは「オーディオ機器から出ている音(直接音)が半分以下」で「5〜8割近くが部屋の残響音(間接音)」なのです。従って、コンサートホールと同じような考え方で、この「間接音成分」をきちんとコントロール(調整)してやらなければ、絶対に良い音質は望めないのです。

では実際にどうすればよいのか?

理論や方法論はともかくとして、実際にあなたのリスニングポジションを「S席」にするための現実的な方法を考えましょう。ステレオ方式による音場の展開では、スピーカーが前に2本しかないので「音像が前に集中する」のは当然のことです。
つまり、リスニングポジションは「コンサートホールを後ろの方から覗いているような位置」でしかないのです。このポジションは、もちろん「S席」ではありません。再び、BOSE博士の言葉を借りるなら、「S席」では「スピーカーの音は1」で「部屋の反射音が8」でなければならないのです。そこで、リスニングポジションを少しでも「S席」に近づけるために、これまでは「反響パネル」の設置による、「コントロールされた反射音の発生」と「カーテンやマットレス」などによる「不要な反射音の除去」を組み合わせることを提案してきました。ここでまず「インシュレーターの置き方やスピーカーセッティングとルーム・アコースティックを極める方法」をおさらいしておきましょう。

STEP1・音を聞きながらスピーカーを動かす

では実際にスピーカーの置き場所を少し変えて、壁や床天井などからの反射音の干渉を整え、音を良くしましょう。まず、「ホワイトノイズのテスト音源」を用意してください。(AUDIO TEST CD-1 / YDDS-2がお薦めです)
「ホワイトノイズ」が手元にない場合には、「ラジオなどのザー音」や「ピアノのソロ演奏のソフト」などが代用できます。ピアノのソロ演奏が代用に適しているのは、ピアノの音が「ノイズ成分を多く含み、弦楽器のように明確な倍音構造をもたない」ためと、ソロ演奏だと音源の位置が明瞭(一つの場所から音が出ている)だからです。
まず片側のスピーカーから「ザー」音を流し、スピーカーの位置を変えながらその音の変化を聴いてください。スピーカーの角度をほんの少し変えても、位置をほんの数o、あるいは数p動かしても、ノイズの「音質」が大きく変わるはずです。(この時、一度にスピーカーを大きく動かしすぎないように注意してください。)
ノイズの音が「濁った音が混じったモーやジャーという音」から、「濁りの少ないサーやシャー音」に変わってきたら、それは悪い干渉が減って音が良くなってきた証拠です。音源にピアノを使用する場合には、「響きの濁りが減少し、タッチの強弱がハッキリする」ように聞こえるようになるとスピーカーの位置が良くなったと判断できます。さらにスピーカーを動かし続けると「再び音が悪くなる」のがわかるはずです。「音が良くなる位置」と「そうでない位置」は、「周期性」を持っているのです。(浴槽の実験と同じです)
この調整を順番に左右のスピーカーで行えば、音場の濁りが激減し「楽器の分離が向上、低音や高音がハッキリと聞きとれる」ようになります。この方法は、ラジカセやミニコンポはもちろんのこと、パソコンやカラオケのスピーカーの設置位置を決める場合にも応用できます。ノイズのような音を出しながら、その音が「澄んで聞こえるよう」に音源の位置を調整するだけで、明瞭度が高まり、聞き疲れがしなくなるはずです。特に一度設置すると位置が変えられない「天井付けのスピーカー」などの設置時には、是非この調整を行うことをお薦めします。
さらに完璧な位置調整を望まれる場合には、「ホワイトノイズ」に加えて「モノラル録音のソフト」を交互に使用します。(モノラル録音のソフトがない場合には、ステレオ録音の片チャンネルを左右に使用してもよい)同一音源を再生することで、左右のスピーカーの音色がかなり違うことに気がつくはずです。それは「スピーカーそのものの音質が違っている」のではなく「周囲の環境(壁や天井などの反射音)を含めた音色が左右で異なっている」ためなのです。「左右で再生される音が聞き分けられないほど同じ音色になる」まで根気よく、左右のスピーカーのベストポジションを探ってください。(馴れれば、モノラル録音の楽器のソフトだけでも調整は可能です)
そして、ほぼ納得できたら「聞き慣れたお気に入りのソフト」を再生してください。きっと、調整前後の音質変化にすごく驚かれると思います。この調整による改善効果は、それほど大きく誰にでも確実に感じ取れるのです。

STEP2・レーザーセッターで位置を追い込む

ここまでは「耳だより」で音質を改善しました。では、さらに「AIRBOW・レーザーセッター」の助けを借りてさらなる音質改善にチャレンジしましょう。
スピーカーには指向性があるため、浴槽での実験のように波(音)が均一に広がりません。左右のスピーカーの相関位置関係を調整していない場合、左右の音が綺麗に重ならず「音が平面的になる」・「音の分離が悪い(音が濁ってしまう)」・「空間の見通しが悪い」などの問題が生じます。(下図左列)レーザーセッターを使って調整すると、左右の音が綺麗に重なり「音が立体的で生々しくなり」・「楽器の分離感や定位感、音場の見通しが改善」され「音楽の躍動感が飛躍的に向上」します。(下図右列)
レーザーセッターによる調整では、曖昧さやいい加減さは一切なく「誰が何時どこで行っても一定以上の効果が保証」できます。また「調整を単純に聴感だけで行う」ため「特定の数値などに縛られることなく一番良い位置を合理的(科学的)に見つけられる」という優れた長所があります。

調整前 調整後

マーク部分での音の重なりは乱れている。

マーク部分での音の重なりは整っている。

左右のスピーカーから発生する音(波)の方向や距離は一致していない。

左右のスピーカーから発生する音(波)の方向や距離は完全に一致する。

音源から重なりの部分までの「距離」は同一でなく、左右の波は「任意の位置で重なり」乱れを生じる

音源から重なりの部分までの「距離」は同一となり、左右の波は「同一の位置で重なり」乱れを生じない。


レーザーセッターの使い方

付属のミラーをスピーカーに貼り付け、レーザーセッターからミラーに「レーザー光」を照射します。反射した「レーザー光」がレーザーセッター・ターゲットの「同一位置」に戻るよう「スピーカーの上下左右の角度」を調整します。レーザーセッターからミラーまでの距離を付属の糸を使い「同一になる」ようにスピーカーを動かします。
この位置的な調整だけでも十分な効果を発揮しますが、最後にレーザー光を照射したまま「スピーカーの角度を変えずスピーカーを前後に数oだけ動かして」音を聞きながら最後の詰めを行います。すると、まるで「カメラのピントがピッタリ合う」ような感じで「ピンポイントの位置で音場空間の透明度が著しく改善される」のが感じ取れるでしょう。

レーザセッターについて詳しくはこちらをご覧下さい。

STEP3・さらなる微調整を行う

しかし、STEP[2]でレーザーセッターを使用すると[1]の調整で決めたスピーカーの位置や角度を変えてしまうため、[1]の調整が「完全に有効ではなくなって」しまいます。そこで、さらに完全な改善を望まれるなら面倒でも[2]の後に[1]をもう一度行い、その後にまた[2]を・・・というように、[1]と「2」の調整を繰り返しながら、小刻みにスピーカーの位置を変え[1]と[2]が両立する「最良の妥協点」を見いださなくてはなりません。この作業が非常に大変なのは、よくわかります。しかし、残念ながら今のところ、一気に[1]と[2]を両立させる方法は見つけられていません。ここは、面倒でも気合いを入れて頑張るしかありません。

STEP4・カイザーゲージを使って調整を発展させる

[3]までの調整を根気よく行った後、今一度、モノラル演奏のソフトを左右片Chずつ鳴らし比べてください。どうですか?左右のスピーカーの音質・音色の違いは、納得ゆくレベルに達していますか?もしまだ納得できないようなら、さらに追い込む方法をお教えしますが、ここまでの調整ですでに集中力を使い果たしているはずですから、ここから先の調整は「しばらく日を開けて、やる気十分になったとき」に行われることを強くお薦めします。そうしなければ「良くなったはずという強い思いこみ」によって「全ての調整を台無しにしてしまう」ことがあるのです。「思いこみ」は聴感に非常に強い作用を与えます。くれぐれも注意しなければいけません。
まず、今のスピーカーの位置を床にテープを貼るなどの方法で「必ず正確にマーキング」します。そして、そのマークの位置から一度に大きくスピーカーを動かさないように注意しながら、[1]と[2]が両立し、さらに左右のスピーカーで別々にモノラル演奏を聞いたときの音が「ほとんど同じ」に聞こえるように、スピーカーの位置を追い込むのです。
この時、スピーカーの移動に「カイザーゲージ」を併用すると面白い結果が得られるかも知れません。私はまだ実験していませんが、「マークの位置」からスピーカーを動かすときに「カイザーゲージの周期性」を使用して「波動の谷(音が重く感じられる位置)」と「波動の山(音が生き生きと感じられる位置)」を「見いだす」事ができれば、それ以後のスピーカー位置調整の「試行錯誤の時間」が一気に減少する可能性があります。また、「カイザーゲージを使う」ことでそれまでは発見できなかった「さらなるベストポジションを発見」できるかも知れません。調整の初期の段階から「カイザーゲージ」を利用しても良い結果が得られるかも知れません。ただし「数字だけを信じて聞くことを怠る」ことだけは絶対にやめて下さい。「絶対的な指標となる数値が存在しない」以上、「実際に音を聞いて確かめる」のが、原始的に感じられても最も理に適った方法なのです。

あとがき

これらのスピーカーのセッティング作業は、気が遠くなるほど根気と集中力の必要な作業です。そこまでしないと「良い音が出ないオーディオ」って一体何なのでしょう?車に例えるなら、差詰め非常に気むずかしい「レーシングカー」です。いったい「いつになったら最高の性能を発揮」するのでしょう。そんな「曖昧な装置に大金をつぎ込む」事ができますか?いいえ、ひょっとすると「曖昧だからこそ平気で大金をつぎ込める」のかも知れません。
もっと簡単に購入した瞬間から最高の性能を発揮できる「フルオートマチックの車」のようなオーディオ機器は存在しないのでしょうか?機械の調整や保守にほとんど気を使わずに「お手軽にいつも良い音を聞かせてくれる」オーディオ装置。それが「マルチチャンネル・オーディオ」なのです。私の推薦するAVアンプ・ユニバーサルプレーヤー・小型スピーカー5本と良質なサブウーファーを組み合わせれば、このような面倒な調整を行わなくても「プロが細心の注意を払ってセットアップした最高レベルのステレオ・オーディオ機器」の80%程度の音質がいきなり実現します。
一見、同じように見えても「オートマチック」を目指す「オーディオ」と、「マニュアル」にこだわる「オーディオ」は、根本から違います。確かにそういう「全く異なるもの」が乱立し、両立するのが「オーディオ」の面白さであり、魅力だとは思いますが、現在のオーディオはあまりにマニュアルこだわりすぎるあまり「音楽を聴けるようになるまでに信じられないほどの労苦をユーザーに強いている」と思います。そして「そのわかりにくさ」が原因で「購入する機器の選択を非常に難しいもの」にしています。また、コストが音質に確実に反映されないからこそ「常識では考えられないほど高い機器やアクセサリー」が幅を利かすのでしょう。
「オートマチック・オーディオ(マルチチャンネル)」になると「機器の善し悪し」は、簡単にハッキリします。誰もが平等に、そして誰もが簡単に理解できるオーディオ。「誰にでも」・「どんな環境でも」・「簡単に」・「しかも安価に」・「最高のサウンドが実現する」そんな音楽ファンにとって夢のような「オーディオシステム」が「マルチチャンネル・オーディオ」なのです。論理的にオーディオ機器の究極の音質を求めた結果、辿り着いたのが「マルチチャンネル」なのです。そして、アナログ時代には考えられなかったマルチチャンネル・オーディオを可能にしたのが「現在のデジタルオーディオ技術」なのです。
目をしっかり開いてください。「音楽の素晴らしさ」は「オーディオのそれ」と較べれば遙かに大きく奥深いのは、私が言うまでもありません。「オーディオ」に気を取られるあまりに「音楽を見失う」ようなことがあれば、それは本末転倒。技術は「人間の労苦を減らす」ためにあり、「新しい技術が人間に新たな労苦を強いてはならない」というのが私の考えです。